+―  anxious  ―+




唇が離れてゆく。

余韻を残したその瞳には今、俺だけが映っている。









どれ位の回数口付けをしただろう。
呼吸をするのが億劫になるほど触れ合っていたかった。


「バッ、、、、、シュ」

しかしは耐え切れず名前を呼ぶことでそれを遮る。

「私、、、、のぼせてしまったわ・・」

「そんなに長い間入っていたか」

「何言ってるの、もう・・・無自覚なんだから」



熱さで赤い頬、のぼせたせいで少し弱り気味の小さな笑みをつくる

「私が後ろ向くから、バッシュ先にあがって」

そう言うとは器用に身を捻り背を向くと上がっていた呼吸を整えるように息を吐きバスタブの縁に額と手をのせ俯く。
今まで見えなかった彼女の後ろ背が妙に自分を惹きつけてくるのは、多分、唇が触れて生じた熱のせいだろう。


だから自ずと体が動いたのは当たり前の事で―


「ッ―あ!!!」


髪をあげて露になっていたその首元に軽く歯をたてると、
突然の事に驚き短く高い声をあげ竦む

「バッシュ!!」

振り返ろうとするその体を自分の体で止めて首筋を舌でなぞれば抵抗の言葉は弱くなっていく。


「やめて、、、って。。。は、ぁッ」

バスタブから出ようとするの体を腹部に腕を回して抑える。

逃げることも出来ず凭れるように壁に頭と手をつくは必死に耐え自分から漏れる甘い声を抑えるため口調を強める。

「出るって、言ったじゃな、い!」

その声すら魅惑的に聞こえるのだからやめる気もない。

「私。。。っ、のぼせてるの!だから」

「歩けなくなったら俺が運ぼう」

「そんな事心、配なんて、、しな、―ッぁや」

胸元に感じた手の存在に反応する身体。

指先が胸の頂を愛撫し掌が触れている全てを蹂躙する。
両方の手で乳房を攻め立てられ次第に抵抗の意思すらなくなっていく。

徐々に呼吸が荒くなり浴室に拡がるの甘い声と揺れる水の音。
耳元に軽く口付けをして今度はの頬に手を添えこちらを向かせると唇を重ねた。

「・・・バッシュ」

相手の手を押さえる様に掴む。

「もう、、、出ましょ」

バスタブから上がるとは纏めていた髪をおろす。
シャワーが髪や体を伝い流れる様子が綺麗だった。

それを見ているのに気がついた彼女は恥ずかしそうに見つめ俺に手を伸ばす。

「上がらないの?」

促されての後ろに立ち一緒にシャワーを浴びる。
するとゆっくりと凭れてきた彼女の体を抱き締めた。
は肩を抱くようにまわされたバッシュの腕にキスをして顔を上げる。

「バッシュは・・・好き?」

「何がだ?」

「キスするの」

「君とするならな」

「あ、そんな事言ってくれるの」

「本当の事だ」

「フフ、真面目な顔」

「俺の嘘は嫌いなんだろう?」

「一緒にお風呂に入るのは冗談から始まったわ」

「冗談ではないぞ。こうしていられるなら毎日でも構わないが」

「それこそ嘘」

「君を愛しているこそだ。それに―」

「ダメ、バッシュ。これ以上喋っちゃ」

開きかけた唇は指先で止められる

「のぼせちゃうわよ、私。。。。。。貴方に」

「そうなってくれた方がいい。君に触れたくて仕方がないんだ」


降り注ぐシャワーが邪魔だとばかりに手でそむけ濡れた唇を求めた。

「―ぅんッ」

収まっていな火照りを誘発するのは容易く、
濡れている体を滑るように掌が動き始める。

「−ハァ、、ぁあ、あ!バッシュ、、ふ、ッぁ!!」

胸を触る手とゆっくり下へ降りてゆく手。
下腹部の中心に僅かに触れただけでは体を震わせる。

水ではない別の液体が手に付着し指先をもっと奥へと割り込ませると、
触れている肌より熱いその内側で指先を動かした。

「っあ、あぁッ、ん、ああッ!」

ガクンと倒れそうになる体を支えるようには壁に手をつけ耐える。
結露した壁に肌が滑りキュッと音を鳴らした。

高まるの甘い声、絡みつく指先の愛液、触れる柔らかい肌―
何もかもまるで麻薬のように自分を虜にする。

体を痺れさせるほどの快楽も、心を締め付ける痛みすら心地いい、
それを与えてくれるの存在をいつも欲している。

何度でもそれを君と味わいたいから、この腕に抱き留めるんだ。

「―・・・

「はぁ、、ぁッ、、バッシュ」

深い口付けをしながら入っていた指を抜き、
背を向かせたままの姿勢でバッシュは今度は後ろからその場所に自らを埋めてゆく。

「んッッ!ふ、ッああぁー!」

ビクリと跳ね上がるの体。

反った背に水滴が流れそれを舌で掬うように舐め上げながらゆっくりと熱い内部を突き進んでゆく。動くたびにが奏でる声はお互いが繋がってゆく事を知らせていた。

「は、、ぁあ、あっ、、ああ、、あっあぅ、やっぁ、ぁああッ!!」

助けを求めるように壁をつたって上にあげているの手を自分のそれで捉え全てが重なるように覆いかぶさる。

湿度の高い浴室で喉の渇きを覚えるほどに詰まる呼吸。
快楽の波に溺れそうな自分が必死になって口を開けるがそこに注がれるのは濃密な口付け。

「っふ、はぁッ、あ、、ぅ。。。バ、、ッツ。。ァシュ、ッ―んああッぁ!」

意識が飛びそうで、声は喘ぎにしかならなくて白くなってゆく頭の中。
責める事をやめない彼の指先が僅かに残っていた理性を切断するように、
の下腹部に伸ばされ敏感な場所を刺激する。

「や、―ぁああ、あッ、ふ、ッぁああッ!!!」

今より何倍にも膨れ上がる快楽に、はより一層甘美なまでの声を発した。
僅かに開く事の出来る瞳で後ろにいるバッシュに目線を送る。

「っく、ぁあ、ゃあぁ!!だ、めッ!!触らな、いで、、バッ、ッシュ。。!」

そんな艶かしい表情をしているのにどうして触れるのが駄目なのか。
願いを聞き入れる気の無い事を目線と態度で返してやる。

「ああ、あッッ!はぁう、ンッ、バッシュ、、、やめ、、てッ!はあ、、わ、たしっ」

押さえていたの手がズルリと下に滑った。
触れているその腕や足が僅かに震えているのに気がついてそっと耳元で囁く。

「俺が支える。だから君は素直に感じてくれればいい・・・」

「っふ、ぁあッ、ぁああん!ンァふぁ、バッシュ!」

「俺の、、、ッ・・・存在を」

「もうッ、はぁ、んぁ。。ダ、めぇッ。。。ぁあああっつッー!!!!!」

ビクリと跳ね快楽が体中を侵食してゆく。
指先まで流れる程のそれは今度はバッシュを攻め立て、道連れるようにしてその熱をの中へと開放した−







「ッ・・・・は・・ぁ・・・」



倒れそうになるを支えて自らも上がった呼吸を整える。

ゆっくりと座り込んだ彼女にそっと手を伸ばし顔を覗きこむと、
瞳を閉じたままのは向き合うようにバッシュの肩に頭をのせた。

その額の優しく口付けをする。

「・・・・・・約束・・」

「―ん?」

「バッシュ」

首に回されたの腕

「本当に。。。。。。。立てないんだから。。責任とって・・・」

「本当。。。にか?」

「は、、あ、当たり前じゃない!!一人で立てたらもうここにはいないわ」

力のこもったその言葉が妙に気になった。

「怒っているのか、

「あんな事しておいて大丈夫なわけないでしょ!本当に倒れるかと思ったのよッ」

フィと顔を逸らし唇を尖らせるを見て小さく鼻で笑うバッシュ。

「悪かった。ならばその代わりにといっては何だが−」

動けない事をいい事にその体をギュと抱き寄せ顔を見入る。

「な、何・・・」

「口付けをしよう。飽きるまでずっと・・・・・」

「――ッ!!」



止める言葉よりも早く繋がった唇があまりに熱くて溶け出しようになる心――――。



















END